米国臨床留学日記: 腹部移植外科

2018年から米国中西部に臨床留学中。留学日記を中心に、関心のある医療トピック(移植外科、癌、肥満外科、予防医学) 趣味の筋トレ、ダイエット、書評、 中心に情報発信していくブログです。

To do or not to do, that is the question.

肝臓移植医療に携わっていて、とても難しいのが、“今きているオファーを受けるべきか、それとも見送ってさらに条件の良いオファーを待つべきか”という選択です。

 

待機リストに載っている患者さんにマッチしたドナーが発生した場合、ドナーの状態と待機患者の状態を天秤にかけて、手術に踏み切るか、オファーを見送るかを決めなければなりません。もちろん、状態がよければ、迷わず手術に踏み切ることができますが、状態が“そこまで良くない”、いわゆるMarginal Donorの場合もあります。状態が良くない肝臓を移植して、万が一、移植臓器不全(primary graft non function)に陥ったらどうするのか。緊急で待機リストに載せて再移植というリカバリーショットが打てることもありますが、それは運次第。できれば再移植になるような事態は避けたいのが移植外科医の本心です。

 

しかしその一方で、待機リストに長く載っていればいるほど、肝硬変の合併症で患者さんがなくなる確率も高くなります。仮に状態が最高でないドナーのオファーでも、待機患者さんの現在の状態を考えて、移植の利益が上回ると判断できれば、移植に踏み切る場合もあります。もちろんその場合も、摘出したドナー肝臓をよく検査し(生検し、病理診断で線維化や炎症、脂肪肝、壊死の程度をみる)、移植可能と判断した場合のみ移植することになります。

 

現状ではドナーコール(あなたの施設の”〜〜”さんにマッチしたこんなドナーがいます。という電話)を受ける移植外科医の判断によって、そのオファーを受けるか受けないかが決まっています。各施設のこれまでの経験に応じて、年齢、BMI、血液検査結果、死因、予測される冷阻血時間などに基準を設けて、移植可能かどうかの判定をしています。

 

その施設の経験値によって、“ウチは年齢は問わずオファーを受ける”という施設があったり、“DBDは年齢問わないがDCDは60歳まで”という施設があったり、様々です。

 

そのため“DCDとDBDで移植成績が変わらない”という論文もあれば、“DCDの方が成績が悪い”という論文もあります。

 

個人的には、DCDの件数が多く、かつ安定した成績を出している施設のドナー手術からレシピエント手術までの流れ、ドナー選定、術後管理の注意点などをまとめたレビューがあれば、DCDプールの拡充につながるのではと考えています。