
まだ医学生で、臨床留学にぼんやり憧れていた頃、一番の心配は英文の推薦状をいつ、どこで、頂くかでした。米国の研修医、フェローのポジションに応募する際には、英文の推薦状が3通必要になります。3通の内、1通は自分が所属している部門の長に書いてもらうことが多いです。日本の施設に属していた場合、残り2通を米国の先生から貰うのが望ましいと思います。
ポイントは
一緒に働いたことがある先生から貰うこと
なるべく具体的なエピソードを盛り込んでもらうこと
その分野で名の知れた先生からもらうこと
です。
一般的な日本の医学生が英文の推薦状を米国の医師から貰うチャンスは、
医学部生時代に実習に行き、実習先の先生にもらう。
卒業してから米国海軍病院(沖縄、横須賀)にいき、そこでもらう。
長期休みを利用して見学に行き、そこで知り合った先生に書いてもらう。
こんなところでしょうか。
英文推薦状は数だけでなく、中身も大事です。人気のプログラムになればなるほど、推薦状の中身も評価されます。自分の経験と、伝聞の話を総合すると、ちょっと見学に行った程度でもらえる推薦状はそこまで大きな力をもたないようです。実際、私も医師になってから数カ所の施設にそれぞれ1ヶ月ほど見学に伺いましたが、簡単な推薦状なら書けるが、外科のマッチングで役に立つような強力な推薦状にはならないよ と言われました。
やはり、王道は医学生時代に時間を確保してクリニカルクラークシップに参加し、そこで自分の担当をしてくれた指導医に推薦状を書いて貰うことだと思います。次に、海軍病院で一緒に働いた上司の先生から貰うことでしょうか。クラークシップも海軍病院も、フィードバックされる環境で一緒に働いていることが、推薦状を強くする要素になります。なぜなら、推薦状に具体的なエピソードを入れることができるから。
通り一辺倒の美辞麗句は、やはり見る側も中身が無いことに気づいてしまうので、具体的なエピソードを交えて書いてもらった方がより面接官の印象に残るのではないでしょうか。
レジデンシーではなくフェローでの渡米になる場合、特に移植外科のように狭い領域の場合、日本人でも、アカデミアで高名な先生に頂いた推薦状が強い力をもってくれることもあります。
(推薦状を頼む際の注意)
米国では、推薦状を書いて頂いた先生が直接ERAS上にアップロードすることがほとんどです。日本人の先生から頂く場合、移植外科のようにERASに推薦状を登録しない場合は、紙、もしくはPDFで推薦状を頂き、それを各プログラムに送る場合があります。その際、推薦状の宛先を各プログラム毎に変えると、プログラム毎に推薦状を書き直していただかなければいけなくなり、恐ろしい手間になります。推薦状の宛先を
『Dear program director:』 として頂くと、1通ですみ、依頼する先生の負担を減らすことができます。
※私の失敗ですが、宛先を各プログラム毎に変えたため、依頼した先生に大変な手間をかけさせてしまいました。情報収集が足りなかったと、反省しています。
追加で、推薦状を頂く手段として、
民間の派遣プログラムを利用する(野口医学研究所、東京海上日動Nプログラムなど)
民間病院でコネクションがあるところで研修し、短期留学に行く(手稲渓仁会病院、麻生飯塚病院、聖路加国際病院など)
などがあります。
Nプログラムの面接や、野口医学研究所の短期留学なども、また別の機会にまとめます。
2018.07.12. 追記
米国医学部卒の医師に指摘して頂きました。推薦状の宛名は
『To whom it may concern』ではなく、
『Dear program director:』がほとんど。
ということです。訂正させていただきます。
