移植外科医の米国臨床留学日記

2018年から米国中西部に臨床留学中。留学日記を中心に、関心のある医療トピック(移植外科、癌、肥満外科、予防医学) 趣味の筋トレ、ダイエット、書評、 中心に情報発信していくブログです。

術者を経験して初めてわかる「神は細部に宿る」

15ヶ月目 肝臓グループ

 

進捗: 腹部臓器摘出、バックベンチ、レシピ肝臓摘出、レシピ脈管吻合(動脈以外) はほぼ自立してできるように。動脈は未だ1件のみです。執刀経験が増えるにつれて、助手していた時には気づけなかった細部の大切さを痛感しています。術者視線になると見える細かいことに、助手でも気づけて学べる人が"センスがある”のかもしれませんが…

 

肝門部処理: 肝十二指腸靭帯の中の結合組織、リンパ管、リンパ節、静脈瘤、肝動脈、総胆管、門脈、それぞれの解剖を把握して処理を進めていきます。1年目で出血させてしまうことが多かったパートです。肝動脈を剥離する際に周りの結合組織、リンパ管と細い静脈の区別がつかず、不用意に剥離しにいって出血を繰り返していました。1年目に使っていた2.8倍ルーペを3.5倍にすることで、微細な構造物の判別が容易になり、電気メスによる剥離の精度が上がりました。2.8倍で見える世界と3.5倍で見える世界がこんなに違うとは… 

 

出血させた時のトラブルシューティング: 肝硬変患者の手術で最も注意すべき部分です。出血させた部分が残り側なのか、摘出側なのかで対応が変わります。肝門部の残り側であれば結紮、もしくはクリップで可及的に止血(動脈は吻合用に後で切り直す。内膜を解離させないように剥離の際にかかる張力は最小限に。摘出側からの出血はまず電気メス(出力120)で凝固止血、駄目なら出血部をスプーンで把持して出血をコントロールした後、4-0又は5-0プロリンで縫合止血しています。これはPiggybackの際にも頻用します。

Piggyback:小児吸引管を使って短肝静脈を剥離しつつ、適宜結紮していく。下大静脈右側で幕内靭帯を処理、右肝静脈を処理するまでがきも。それ以降は仮に引き抜き損傷を起こしても縫合止血が用意。助手のテンションの掛け方がとても重要。右側を攻めている際は肝下部下大静脈をを右→左に圧排し、剥離している面に張力をかける。左側を攻めている際は逆に左→右に圧排する。尾状葉が肥大し下大静脈を全周包み込んでいるような症例ではIVC右縁を一気に剥離できないので、目視下に剥離したところまでストレートクランプでクランプ→切離→4−0プロリンで連続縫合閉鎖 を繰り返して肝実質を切離する。ブラインド操作しない。これ大事。

 

静脈吻合:助手の場出しが一番大事。適度に肝臓を牽引して静脈後壁を露出する。牽引しすぎると静脈同士が寄らない。牽引が弱すぎると後壁が見えない。2助手は糸のフォロー。レシピ側後壁を運針する時は少しフォローする力を弱めて糸を弛ませると運針が容易になる。後壁が終わったら門脈カニューラから室温に温めたアルブミンの還流を開始し保存液を洗い出しつつ肝臓を徐々に温める。還流しつつ静脈前壁を縫合する。

 

門脈吻合:捻じれない、狭窄しないことが大事。出血してもいくらでも縫合止血できる。狭窄したら全て最初からやり直し。

動脈吻合:レシピ側の動脈を切り直す時はring tip forcepsで内膜を優しく把持しながら切ること。