移植外科医の米国臨床留学日記

2018年から米国中西部に臨床留学中。留学日記を中心に、関心のある医療トピック(移植外科、癌、肥満外科、予防医学) 趣味の筋トレ、ダイエット、書評、 中心に情報発信していくブログです。

脳死肝移植手術記録 胆管吻合

 

www.okome-surgery.com

 

 

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肝動脈、Piggyback-門脈ときたので、今日は胆管吻合についてまとめてみます。

 

肝移植の胆管吻合にはドナー肝臓の総胆管とレシピエントの総胆管を直接つなぐ、胆管-胆管吻合と、ドナー肝臓の総胆管をレシピエントの挙上空腸につなぐ胆管-空腸吻合があります。

基本的には手技がシンプルな胆管-胆管吻合を選択します。

再肝移植症例で肝門部の癒着が激しい場合、胆管に病変がある場合(胆道閉鎖症、原発性硬化性胆管炎、肝門部胆管癌など)には胆管-空腸吻合が選択されます。

日本では胆管-胆管吻合を選択した場合、吻合部からの胆汁瘻を予防するために吻合部にステントチューブを挿入している施設が多いのですが、当地ではステントチューブそのものが閉塞などでトラブルの原因になるという考えのもと、一切挿入していません。これは胆管が細い小児の症例でも一緒です。

 

~胆管-胆管吻合の手順~

 まず、ドナー胆管、レシピエント胆管の先端をそれぞれ3−5mmほど切離します。これは先端のトリミングにより、挫滅した組織を取り除くため、及び、3 o'clock, 9 o'clock arteryからの細動脈のFlowを確かめるためです。細動脈からの出血を5−0 prolene で縫合止血します。この際胆管内腔が狭小化しないよう注意を払います。

 以前は胆管-胆管吻合に使う針糸は5-0PDSを使用していました。最近の症例ではより細い6−0PDSを使用しています。吻合法は3点支持法による前後壁単結節縫合が基本となります。基本的に結紮糸が管外にくるよう、外内内外で運針しますが、スペースがなく、後壁の運針が困難な場合は内外外内で短管内腔に結節がでても許容しています。ステントチューブは留置していません。

 ドナー胆管、レシピエント胆管で口径差がある場合は小さい方の胆管前壁をポッツ尖刀で切開して胆管形成術をおこないます。吻合は基本の前後壁単結節縫合をおくことがほとんどです。ヨローッパで訓練されたスタッフだけ、ドナー、レシピエントのそれぞれ前壁、後壁を切開し、後壁連続、前壁単結節で特殊な胆管形成術をおこなっています。

 

実際の流れ

 ドナー胆管、レシピエント胆管とも断端をTonotomyで切離して3時、9時の細動脈を5-0Proleneで縫合止血します。両胆管左端に6-0PDSでStay-sutureをおきます。同様にドナー胆管右端とレシピ胆管右端にStay-sutureをおき、3点支持とします。

後壁の単結節縫合を左端から行います。後壁は一針一針結紮しながら縫合します。

前壁の単結節縫合を左端から行います。前壁は針糸をかけたら一針ずつモスキートで把持しておき、最後に結紮します。

 

※胆管も施設により、また外科医により吻合法の哲学が異なる部分だと思います。

具体的には後壁の結紮糸を管内にもってきても問題ないと考える人もいれば結石などのトラブルの原因になるから極力管外にもってくるべきだと考える人もいます。また胆管血流を維持するためにいわゆる3時、9時の小血管は温存するべきと考える人もいれば、当地のように縫合止血してしまう施設もあります。また、胆管血流を維持する目的で動脈吻合の際に胃十二指腸動脈(GDA)を極力温存する施設もあります。当科ではあまり胆管血流を温存する目的でのGDA温存はおこなっておらず、むしろ動脈吻合長の問題でGDAを処理するかしないかの判断をしているようです。