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日本生まれ日本育ちの外科医です。 移植外科医として2018年からアメリカ中西部に臨床留学中。 初期研修、後期研修、大学院は日本で経験しています。 USMLE、留学日記を中心に、関心のある医療トピック(移植外科、肥満外科、予防医学) 趣味の筋トレ、ダイエット、書評、アプリ紹介など 中心に情報発信していくブログです。

手術にまつわるあれこれ 肝移植 動脈吻合(成人)編

 

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twitterにこんなご意見を頂いたので、これを機に当地の手術手技や肝移植手術の手順についてまとめてみることにしました。あくまでも当地でのお作法ですので、形成外科や血管外科の専門家の先生や他施設の先生からみると?な点も多いかもしれません。僕も最初は(今も)色んなお作法が日本と異なるので、適応するのに苦労しています。ウチの施設はここが違うよ!という点がありましたら、是非コメントでもツイッターでもご教授頂けると嬉しいです。

 

動脈吻合(成人)

基本的に成人も小児も7−0 Prolene を用いて吻合しています。

準備

まずNative動脈、Graft動脈根部をブルドック鉗子でクランプします。

Native動脈の周囲を剥離し、血管長を十分にとります。場合によってはGDAを結紮切離し剥離を延長します。十分に剥離した後、状態の良い部分を吻合部に選びます。吻合部をtenotomy scissorsで切離します。Graft動脈は血管長が適切な長さになる位置をNative動脈の位置から考え、直線距離でやや短くなるようにtenotomy scissorsで切離し吻合に備えます。

 

動脈吻合はパラシュート法で行います。

まず後壁を吻合します。動脈の左端に7−0 Proleneを外内内外で通し一方をStayとします。もう一方をGraft動脈の内糸にし、そこからNative→Graft向きに内外外内で内翻連続縫合で動脈後壁の右端まで縫合します。この際、助手は小児用吸引管を左手に持って、既にかけた糸がこれから糸をかける部分の邪魔にならないように糸を助手側に少し牽引して適切な緊張をかけます。動脈後壁右端まできたらNative動脈側から糸を外糸にします。

左右端の糸を術者が両手に把持し、適切な緊張を保ちながら両方の糸を牽引してパラシュート法で動脈後壁を接着させます。この時、機械出し看護師は後壁全体にかけられている糸に水をかけて、滑りをよくします。助手は右手に持った鑷子でGraft前壁の組織を把持し、微妙に引いたり押したりしながら動脈同士が接着するのを補助します。

次に前壁の吻合です。

後壁右端の外糸はゴム付きモスキート(Booties,Shodなど色んな名前があります)で把持しておきます。左端の外糸を用いて、前壁をover-and-overで連続縫合します。この際助手は右手で糸の半分よりやや助手側を把持して緊張をかけ、糸のたるみが運針の邪魔にならないようにします。動脈壁に糸をかける直前には、少し糸を緊張を緩ませ、動脈内腔を確認しやすいように配慮します。操作中、助手は左手に小児用吸引管を持ち、適宜動脈内腔が見えるよう“そっと”血管内腔の血液を吸引します。動脈前壁右端まできたら、Graft前壁より外糸とした前壁糸と後壁糸を結紮して吻合を完了します。結紮後、まずNative側のブルドック鉗子を外して、吻合部に漏れがないか確認します。大きな漏れがないことを確認して、Graft側のブルドックも外して血液を還流させます。針穴からのわずかな漏れに関しては、T &Gという接着剤?のようなシートを血管に巻きつけて自然に止血されるのを待ちます。大きな漏れがある場合は7−0もしくは8−0Proleneで単結節、もしくはTransverse sutureを置いて、止血します。

 

小児はお作法が異なるので、また次回に。

下大静脈編(Piggy- back法)、門脈編、胆管編と順次更新していきますので、僕の理解の不十分な点、改善できそうな点がありましたら是非コメントいただけると幸いです。